東大の研究者に聞く!絵本の読み聞かせの効果【Part1「読み聞かせ」って何がいいの?】

子育て

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【Part1「読み聞かせ」って何がいいの?】
【Part2 どんな絵本がいいの?】
【Part3 絵本が好きではない子には
【Part4 絵本とデジタルデバイスのお話】
【Part5 パパの読み聞かせのポイント!】

<お話を聞いた人:野澤祥子さん>
東京大学 発達保育実践政策学センター准教授
1977年茨城県生まれ。専攻は発達心理学、保育学。
2010年に東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。
2013年博士号(教育学)取得。
2014年東京家政学院大学現代生活学部児童学科准教授を経て
2016年から東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター准教授を務める。

<聞き手:杉山錠士さん>
兼業主夫放送作家。NPO法人ファザーリング・ジャパン会員。
1976年、千葉県生まれ。18歳と10歳という年の離れた二人の娘を子育てする兼業主夫放送作家として、FMラジオを中心に情報番組、子育て番組などの構成を担当。「日経DUAL」をはじめWEBメディアでは各種コラムや記事を執筆し、「日大商学部」「筑波大学」や大田区両親学級、品川区男女共同参画課などで講演を実施。地域ではPTA会長やパパ会運営を歴任。子育てアイテム「パパのツナギ」企画制作販売、パパ向け情報サイト「パパしるべ( https://papashirube.com/ )」編集長。

◎協力:Read it LOUD阿佐ヶ谷校(アルーク阿佐ヶ谷内)

トーク内容テキスト(一部編集しています)

(杉山)今回のテーマは、「東大の研究者に聞く!絵本の読み聞かせの効果」です。
講師は、東京大学 発達保育実践政策学センター 准教授 野澤祥子先生です。
よろしくお願います。

(野澤)よろしくお願いします。

(杉山)野澤先生には、事あるごとに絵本の話を聞かせていただいています。
「発達保育実践政策学センター」とは、どういうところでしょうか?

(野澤)その名の通りと言いますか…
主に、乳幼児期の子どもたちの発達と保育の実践、政策を研究するセンター。
教育学研究科附属のセンターです。

(杉山)その中で、絵本の読み聞かせ等を中心に研究している?

(野澤)ポプラ社さんとの共同研究で、
・絵本、デジタル絵本の読み聞かせの研究
・読み聞かせに対する親の考えや意識の調査
・園や図書館などの絵本、本環境の実態調査
を、ひとつのプロジェクトとして進めています。

(杉山)先生ご自身も、二児のお母さんですよね。
上が男の子、下が女の子。
子どもたちには、絵本はたくさん読みましたか?

(野澤)特に上の子は絵本が大好きだったので、たくさん読みました。
絵本を読んでいる時だけは、静かにしていた(笑)。

(杉山)上のお子さんが小さい頃は、アメリカに住んでいましたよね?

(野澤)夫が留学したので一緒に行って、アメリカで出産しました。
上の子が小学校に入る直前の6歳までは、アメリカで過ごしています。

(杉山)お子さんは、英語しか喋れないような状態で、帰国した?

(野澤)日本語に関しては、聞いたら分かるし、一応喋れましたが、片言の状態での帰国でした。

(杉山)アメリカにいる頃は、英語の絵本もたくさん読みましたか?

(野澤)図書館によく行っていましたが、アメリカの図書館には日本語の絵本はあまりなかったので、英語のものを読んでいました。

(杉山)今は、日本の図書館には多言語の絵本が増えている気がします。
そのような環境は、整ってきている?

(野澤)地域・図書館によりますね。

(杉山)先生自身、もともと絵本は好きだったんでしょうか?

(野澤)子どもの頃は、「普通に読む」程度でした。

(杉山)ということは、昔から絵本が大好きで、絵本の研究をするために今の職業を目指した…というわけではない?

(野澤)そういうわけではないですね。

センターを立ち上げた秋田貴代美先生は、絵本の研究者。
秋田先生と一緒に研究を始めたことがきっかけ。

(杉山)すごく好きなものって、バイアスがかかってしまう気がします。
先生の場合は、絵本を読んできた経験はあるけれど、客観的にとか、ずっと研究をしてきたというわけではないと思います。
そういう方が研究を始め、初めて深く入っていった時に「思っていたのと違うな」と感じた部分など、発見はありましたか?

(野澤)ブックスタートのプロジェクトの一環で、秋田貴代美先生と一緒に絵本の研究を始めました。
生後10ヶ月ぐらいの赤ちゃんとその親を、3歳頃までの追跡調査。

当時は大学院生だったので、赤ちゃんと絵本というイメージがあまりありませんでした。
ひとりひとり、絵本とのかかわり方が違うのが、すごくおもしろい。
1歳半頃になると、子によって絵本にはあまり興味を持たず他のところに行くようになるが、3歳近くになると大人と一緒に読めるようになる。
発達のプロセスが見えることが、おもしろいです。

(杉山)生後10ヶ月でのブックスタートの話がありました。
まだ言葉がわからない・言葉を発することができないような時期でも、絵本を一緒に読むことには効果がありますか?

(野澤)ブックスタートは、自治体によっては生後4ヶ月頃に絵本を渡すようなところもあります。
赤ちゃんが絵をじっと見ることに、親が驚くこともよくあります。
絵本とは分かってはいないと思いますが、「何かおもしろいものがある」とじっと見るので、そこに語りかけたり、興味があることを知るきっかけになります。

(杉山)認識をするんですね。

(野澤)生後4ヶ月頃では、「それが何なのか」まではわかりませんが、色のコントラストなどで認識します。

(杉山)小さい子は、色味のハッキリしている絵本の方が反応がいい?

(野澤)コントラストがあるところをよく見ている。
人間の顔も、目の形など、コントラストのところをよく見ます。

(杉山)赤ちゃんは、「目2つと口」の形が好きで、それを認識していると聞いたことがあります。
絵本に出てくるキャラクターなども、それを意識して作られているのでしょうか?

(野澤)ずっと読まれてきている絵本は、赤ちゃんが興味を持ってじっと見るものが残ってきている。
作家さんも、赤ちゃんが好きだろうというものを意識して作っておられるのではないでしょうか。

(杉山)言葉が分からない状態でも、読み聞かせた方がいい?

(野澤)状況によります。
まだ寝ているような赤ちゃんの場合には、耳は傾けていると思うので、読んで聞かせてあげるといいと思います。

もう少し大きくなると、絵本を触ったりめくったりするようになり、読んでいるのに次のページをめくる…というような場面も出てきます。
その場合は、開いたページを読んであげたり、興味を持ったものに対して「○○だね」と声をかけてあげたりするといいでしょう。

調査に行くと、真面目な親は「そこじゃないよ」と言って元のページに戻ろうとしますが、そうすると子どもはどんどん興味をなくしてしまいます。
そんなに真面目に考えなくてもいいのかなと思います。

(杉山)逆から読んでもいいし、途中から開いてもいい?

(野澤)特に、赤ちゃんの絵本はストーリーなどもかっちりとしていないので、どこから読んでもいいです。
親がどのページを開いても、決まったページしか見ないというお子さんもいました。
とにかくページをめくることが大好きで、読めないくらいに早くめくる子もいます。
めくるということ自体も、本との関わり。

もう、自由です!

(杉山)絵本を見始める頃は、そもそも、「これは【本】である」というところから始めるわけですものね。

(野澤)そうですね。
【本】という、いろいろなモノのうちのひとつ。

(杉山)めくるのは、【本】というモノを認識するためのひとつの手段でもある?

(野澤)「萌芽的なリテラシー(読み書き能力)」のひとつに、「めくる」という絵本の機能を学ぶというのがあります。

(杉山)なるほど。
【本】が分からない子どもに絵本を渡すと投げてしまったりするけれど、分かってくると、それを開き始める?

(野澤)そうですね。
わかるようになると、めくったりして楽しむようになります。

(杉山)経験しておくと、絵本に対しても少しポジティブになる?

(野澤)そうですね。

(杉山)お父さん・お母さんの声がずっと聞こえるのも、愛着形成などに関わってきますか?

(野澤)絵本は、その場を一緒に見るという関係(共同注意)が生まれやすい。
同じものを一緒に見て、そこに声がかかることで、「それが何なのか」を認識することができる。
絵本は共同注意が生まれやすい限定された空間だと考えられます。言葉の発達との関連が見られるという研究があります。

(杉山)メインの絵だけじゃなく、いろいろなところに目が行くようなことも、注意や視点が広がるなど、プラスになりますか?
ストーリー通りに読まなくても、絵本の端っこの方ばかり気にしている子がいてもいい?

(野澤)もちろん、そうだと思います。
3歳頃になってストーリーがわかるようになると、ストーリーに興味を持つようになります。
特に1歳半~2歳頃は語彙が爆発的に増える時期なので、いろんなものを見つけて探しっこしたりするのも楽しい読み方かなと思います。

(杉山)なるほど。
言葉を教えたり、親の会話を聞いて語彙を得るということもあると思います。
絵本を読んだ方が語彙力は上がりやすい?

(野澤)絵本は限定された空間になるので、同じものを見ているという確率が高くなります。

また、研究によると、絵本にしかあまり出てこない語彙もあるといわれています。
会話は、ある程度決まったやり取りが多いし、関係性によって話の内容も決まっている。
けれど、絵本の中には普段の会話では出てこないような語彙が入っているので、言葉との出会いの場になります。

もちろん、普段の会話などもすごく重要です。

(杉山)子育てしていると、「どこでこんな言葉を覚えてきたの…」みたいなこともありますよね。
どこからかはわかりませんが、どこかで仕入れてきているわけですよね…。
それが、絵本から習得している可能性もある…ということですね。

(野澤)それもあると思います。

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