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【Part4 ゲームが教育分野に進出!?】
【Part5 ゲームへの価値観をアップデートする】
【Part6 ゲームとの付き合い方に悩む親へ】
<お話を聞いた人:谷田優也さん>
1982年東京都生まれ。ウェルプレイド・ライゼスト株式会社 代表取締役CEO。角川コンテンツゲートのプロデューサーを経て、アジア圏向けスマートフォンのゲームアプリをプロデュースするなどデジタルコンテンツ業界で注目を集める。2015年11月にウェルプレイドを設立しeスポーツのイベント企画運営、プレーヤーのマネジメントや活動支援、eスポーツ関連のコンサルティングなどを展開。ウェブディレクターの妻と5歳の長男を子育て中。ウェルプレイド・ライゼスト株式会社 https://wellplayed-rizest.jp/
<聞き手:杉山錠士さん>
兼業主夫放送作家。NPO法人ファザーリング・ジャパン会員。
1976年、千葉県生まれ。高2と小3という年の離れた二人の娘を子育てする兼業主夫放送作家として、FMラジオを中心に情報番組、子育て番組などの構成を担当。「日経DUAL」をはじめWEBメディアでは各種コラムや記事を執筆し、「日大商学部」「筑波大学」や大田区両親学級、品川区男女共同参画課などで講演を実施。地域ではPTA会長やパパ会運営を歴任。子育てアイテム「パパのツナギ」企画制作販売、パパ向け情報サイト「パパしるべ( https://papashirube.com/ )」編集長。
◎協力:Read it LOUD阿佐ヶ谷校(アルーク阿佐ヶ谷内)
トーク内容テキスト(一部編集しています)
(杉山)親がゲームのことを分からず、どうしてもネガティブに捉えてしまうこともあると思います。
けれど、親が子どもと一緒にゲームをやるメリットもありますよね?
(谷田)ありますね。ゲームに限った話ではなく、分からないことは不安なんですよね。
分からないことが続くと、「何やってんだろうな」「どこにいるんだろう」といったネガティブな感情が生まれる。
上手か下手かはどうでもいいので、子どもが何をやってるかを理解してあげる。
親か子どものやっているものに興味を持つために子どもの目線に寄り添う時に、ゲームを通じてなら、自分の実力をセーブして歩み寄るではなく、自分の実力をフルで使ってようやく子どもと対等になれたりする。
むしろ、これまで子どもに「教える」のが親の当たり前だと思っていたが、ゲームの世界だと、自分が成長するために子どもから学べるコミュニケーションが出来る。
そんな機会は、これまでなかったと思うんですよね。
それを親も体験できる、学びの気持ちでいくことには、得るものがいっぱいある。
親がゲームを一緒に行ったほうがいいかについて。
「子どもにゲームをやらせてあげてもいいかな」と思う親なのであれば、絶対、一緒にやった方がいいです!
また、僕はそこそこゲームを一生懸命やってきていたので、ゲームが、簡単に親をリスペクトしてもらうひとつのコミュニケーションにもなっています。
子どもには「なんで親は怒るの?」「なんで親は偉いの?」とわからないこともあるが、尊敬している人から何かを言われると、発言へのリスペクト値が上がる。
「お父さんのおかげで今回勝てた。嬉しい!すごい!」と、ゲームが親をリスペクトしてもらうツールにもなり得る。
逆も然り。息子が難しいことをやる姿を見たり、自分よりもうまいと思う瞬間に会った時、子どもを尊敬できるようになるんですよね。
「そんな手があったのか。そんな勝ち方があったのか。すごいな!」と。
親と子どもが上下関係だったのが、ゲームをやる時だけは対等でいられたり、上下関係がひっくり返ったりする。
他の親子のコミュニケーションでは結構難しいと思いますが、ゲームでなら、それを気軽に味わえます。
一緒にゲームクリアを目指す時、親父は子どもの相棒になる。
子どもは、相棒と一緒に困難を乗り越えた経験を絶対大事にするはず。
「よくわからないけど教えて?」とゲームを子どもに教えてもらいに行くことを「恥ずかしい」とか「プライドがある」など言う前に、「一緒に遊びたいんだけど…」と言ってくれたら、絶対子どもは嬉しいと思いますけどね。
(杉山)最近問題になる、ゲームの課金を親のクレジットカードを使って大変なことになった…というような話。
あれもそもそも、その手前の、コミュニケーション不足の問題ですよね?
(谷田)そう、そう。絶対そう。
あれは、あの瞬間を生み出した子どもを怒ってる親が本当に恥ずかしいと思います。
子どもにそうさせる環境を作り、その信頼を越えられるコミュニケーションをして来たかったのに、子どものせいにするのは、親がダサい。
我が家はフォートナイトをプレステ4でやらせていますが、V-Bucksというゲーム内通貨をすぐ購入できるよう、僕のクレジットカードが紐づいています。
でも、全然、そんなコミュニケーションにはならない。
子どもも、V-Bucksをすぐに買えることも知ってるけど、別に買わない。
「こういうことができた時にV-Bucksを購入してほしい」と交渉してくるようになった。
「『どうぶつしょうぎ』で3連勝したらV-Bucksを買ってくれませんか?」みたいな…(笑)。
全く勝てずに買ってもらえない…なんていうことにも、納得して帰っていく。
やはり、普段のコミュニケーションかなと思います。
(杉山)そういうことをやってる時点で、隠れている。
それがまずいですよね。
(谷田)親が後ろめたいものと押し付けることが、そのアクションを生む。
「ゲームはゲームでいいこともあるけれど、『こうしてほしくない』と思っていることは私の話を聞いて」っていう、セットでコミュニケーションが必要。
「万能ではないけれどいいと思っているものを、一緒に遊びたい」という理解を子どもに示していくことが、何よりも大切なんじゃないかと思います。
(杉山)「万能じゃない」という言葉が出ました。
「ゲームを子育てに取り入れる」など講座を行うと、聞く人の中には「ゲームをすれば子どもは読み書きが出来るようになったり、頭よくなったり…」というようなことを望む人もいらっしゃいます。
ゲームは、「万能ではない」。やらなければならないことはやる。
そして、ツールとして、レジャーとして…いう考え方ですね?
(谷田)そうですね。
ゲームだけさせていれば他の経験をしなくていいのかというと、たぶん違う。
選択肢を多くしてあげることが、親の務めだと思っています。
ゲームを遊んで得ることのできる体験を与えることにためらわない。
自転車に乗ったり、キャンプに行ったり、水泳をさせたり、運動させたりすることで得られるエクスペリエンスは、それはそれで味わせられるものがある。
けど、運動だけやってれば全て解決するかっていうと、絶対そんなことない。
勉強だけしていたら、学歴さえ優秀だったら、いい大学さえ出てさえいれば、優秀な社会人になれるかというと、いろんなコミュニケーションやいろんな悩みをどう解決していくのかっていうことは、学問を頑張っただけで発生するかというと違いますよね。
そう言うことだと思います。
音楽を聴かせる、運動する、ゲームをする…様々な選択肢の中で、いいところと気を付けたほうがいいところに対し、親が目を背けないことが重要。
(杉山)そういう意味では、親の影響も大きいですよね。
親がいかにゲームに対してネガティブに捉えずに、向き合うか。
例えば、夏目漱石の「こころ」を読みなさいみたいなことは、世の中的に「いいことをしている」ととらえられがち。
でも、堀井雄二の「ドラゴンクエスト」をやりなさいというのは、あまりいいことのように見えない人もいる。
そういう違いですよね。
(谷田)その価値を理解してない人の言うことに影響を受けたいのかって話になってきちゃうと思う。
親が、ゲームの価値観を親がアップデートするのが先じゃないのかなと思います。
例えば、子どもがSwitchの最新のドラゴンクエスト持ってたら、ゲーム機を借りて1回やってみるとか。
「こんな風におもしろいんだな」と知るだけでも、得られるものも多分あるだろう。
更に、子どもが一生懸命やってるものを一緒にやるにはどうしたらいいのかと調べて、一緒に行ってみることで、自分の価値観をアップデートすることになるかなと思う。
もちろん、今まで「よし」とされてきたものをせずにゲームをやれば全部解決するわけではない。
我が家は毎週平日、勉強と一緒に、新渡戸稲造の「武士道」を読ませています。
子ども版の「こども武士道」っていう本があって、ゲームの話とは関係ないけれど、これむちゃくちゃオススメ。
例えば…
「礼儀」とは、挨拶ができるなどということではなく、人の気持ちに寄り添うことだと書いてある。
「本当の優しさ」は、甘やかすということではなく、時に厳しいことを言ったとしてもその人の成長を願うという気持ちのこと。
妻が子どもに、「勉強をしていない」「本を読まない」と怒るが、それがなぜかわかるかと聞くと、「『武士道』に書いてある、本当の優しさ。自分のことをどうでもいいと思ったらそんなこと言わないから、母ちゃんは僕に成長してほしいと思ってそう言ってるんだね」って自分で説明するわけです。
じゃあ、いくらいい本だからと言って、これだけ読ませていればゲームで得られるエクスペリエンスを得られるのかというとそうではない。
やっぱり、「意外と悪くないもんだな」「それっておもしろいの?」って言ってみること。
単純にプレーするなら外に行かなくてもいいし、すぐに準備できるものもあるし、投資もそんなに大きなものではない。
気軽に子どもと寄り添えるコミュニケーションツールと思って、「ちょっと一緒にやってみてもいい?」と言える勇気が、ゲームへの理解を一番深めていくんじゃないかなという気がします。