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【Part3 家庭と園は協力して子どもを育てる!】
【Part4 保育士の課題と魅力】
【Part5 Q&A/現役保育士からのメッセージ】
<お話を聞いた人:杉本倉規さん>
奈良県出身。聖和大学 幼児教育学部幼児教育学科 (現 関西学院大学 幼児教育学部)卒業。
保育士→デューク更家の弟子→モデル→俳優と様々な職を経て、カナダのトロントへの留学中に日本の保育を改善することを決意。保育士をしながら保育園の実状を調べ、現在は保育問題の啓蒙活動やコンサルティングにも関わる。
<聞き手:杉山錠士さん>
兼業主夫放送作家。NPO法人ファザーリング・ジャパン会員。
1976年、千葉県生まれ。高2と小3という年の離れた二人の娘を子育てする兼業主夫放送作家として、FMラジオを中心に情報番組、子育て番組などの構成を担当。「日経DUAL」をはじめWEBメディアでは各種コラムや記事を執筆し、「日大商学部」「筑波大学」や大田区両親学級、品川区男女共同参画課などで講演を実施。地域ではPTA会長やパパ会運営を歴任。子育てアイテム「パパのツナギ」企画制作販売、元パパ向け情報サイト「パパコミ」編集長。
トーク内容テキスト(一部編集しています)
(杉山)保育士によって、子どもたちの反応は違う?
(杉本)それはもう確実にそうですね。
なので、保育園・幼稚園は、担任を持つと最長で基本的には2年までしか持ち上がらないんですよ。
というのは、1人の保育士が5年間(0~5歳まで)担任を持っちゃうと、その人だけの色になっちゃうので、保育的には刺激が偏ってしまう。
子どもたちには、いろんな刺激をあげた方がいいから、いろんな大人と関わった方がいい。
担任も2年持ったら、次は違う担任のカラーの刺激を受けるというというサイクルが基本的には存在します
(杉山)担任に向き・不向きや、合う・合わないということはある?
(杉本)クラス分けは、どの園も苦労するんです。
人が育ってなかったりすると、本当はこの先生を別のクラスに移動させたいんだけど、仕方なく3年目も担任を持たせるとかいうパターンもあります。
その先生のスタンスが、幼児よりも乳児に向いていたりといったこともある。
そこらへんは、年度末になると園が頭を悩ませますね。
(杉山)ちょっと裏話のような話題ですが、小学校だと、経験の浅い先生にだいたい3年生ぐらいを持たせるというような話を聞いたことがあります。
3年生ぐらいは、いろんな会話が分かるようになった一方、高学年ほど自我が強くないので、一番荒れない・もめないからという理由のようです。
(杉本)僕自身の小学校時代の経験と、今の保育業界の経験でいくと、むしろ中間が一番実は難しいように感じます。
自分が小学3・4年の頃はベテランの先生が担任でしたし、他もそういうイメージがあります。
幼稚園などでも、3年保育(3・4・5歳)で、4歳児が一番難しいかと。
5歳児寄りの4歳と、3歳児寄りの4歳がいるので、一番幅広くカバーできる人じゃないと対応できない。
僕は意外と中間が難しいと思ったりしてます。
(杉山)じゃあ、0歳児から5歳児クラスまである中でも、一番難しいのは4歳児?
(杉本)うん、やっぱり4歳児じゃないですかね。
3歳児までは、まだ人とのコミュニケーションに我がそこまで入りきらない、出し切れないという部分はあるんですけど、4歳児からガッツリ出せるようになるので。
かと言って、先ほどの話のように、自己同士での解決がまだ難しいから、保育士がその間に入ってあげないといけない機会が多いです。
やっぱり4歳児が、ある意味で一番大変じゃないかなと思います。
(杉山)親としては、2歳ぐらいのイヤイヤ期が大変という一般的なイメージがあります。
(杉本)それはまた、別の大変さがありますよね。
(杉山)イヤイヤ期への保育士としてのやり方はある?
(杉本)保育園では、基本的には0・1・2歳で流れが出来ていて、そこで集団活動を一応している状態。
もちろん、イヤイヤは言いますけど、たぶんご家庭でのイヤイヤよりは全然レベル的には低いと思う。
保育園で言っても、聞いてもらえないということを、子どもたちが理解しているので。
イヤイヤ期は少なからずは出るんですけど、一人一人に保育士が丁寧に関わって気持ちを聞くので、全員に一気にイヤイヤ期が出ることはない。
そんなに大変だったという経験もあんまりないですね。
(杉山)丁寧な関わりの話なども出ましたが、イヤイヤ期対策で家庭でも役に立ちそうなことがあったら教えてほしいです。
(杉本)やっぱり一番は、子どもが自分で決めるための選択肢を与えることです。
「こっちとこっち、どっちならできる?」っていうのを保育士側から提案して、子どもが「こっちにする」と選んだら、とりあえずそれをさせてあげる。
例えば、集団に入りたくないのなら、「今から外に出るけど、外に行きたくないの?部屋に残るか、外に出るかどっちがいい?」って聞いて、子どもが「部屋に残る」というのであれば、短時間でも、そのことに触れずに、部屋にいる時間を作ってあげる。
あとは、強制的に外に連れていくってことをしないで、促していく。
「本当にいいの?みんなが出ていくけど…」という感じでやっていくと、意外とすんなりと行ったりすることも。
行かなくても1人保育士が残って、子どもの様子を見ながら、いろいろとその子に合った声掛けをして、「じゃあ行こうか」っていう流れに持っていく。
親御さんと一緒で、保育士も、この子がどう言えば自分の話を聞いてくれるかというのは最初は手探りです。
保育士だから簡単にできるってことじゃなくて、いっぱい手数を出して、どれに子どもが反応してくれるかを、日々観察して、研究してやっている。
それが、ご家庭でも一番大事かなと思う。
(杉山)「促す」という言葉が出ていると思います。
促すことを進めるのって、結構難しいですよね。
親からすると、単純に「やりなさい」が一番簡単じゃないですか。
促す方法の手数を知りたいです。
(杉本)無意識にやっているところもあるが、「押してダメなら引いてみろ」ではないですけれど、簡単に言うと、アメを与えるかムチを与えるかというところからスタートです。
でも、前提として、子どもの気持ちを聞くっていうのを絶対やらないと、うまくはいかない。
まず気持ちを聞いた上で、「わかるわかる」って言ってその気持ちに共感してあげて、そこで「でもさ、○○したらいいんじゃない?」っていう提案をするのが、基本ですね。
やっぱり、まず「その気持ちになるのはわかるよ」っていうアピールはしてあげないと、子どもは落ち着かない。
(杉山)「そうしてくれたら嬉しい」というような親側の感情は、伝えていってもいい?
(杉本)子どもには、自分がやって楽しいからやるというパターンの子と、これをやったら誰かが喜んでくれるからやるっていうパターンの子がいる。
まず、その子の思考が、どちらかを見極めることが必要。
人が喜んでくれるからやることに意義を見出せるという子どもには、「それをやってくれたら嬉しいな/悲しいな」というこちら側の感情を伝えるのは、すごい効果的。
でも、自分が楽しいかどうかで動いている人にそれを言っても、効果が薄い。
どちらかを見極めて、前者(誰かが喜ぶからやるという子)あれば、もうどんどん言ってあげたほうがいいです。
(杉山)後者(自分が楽しいからやるという子)にはどう声をかける?
(杉本)後者の場合は、その子側に立って、嫌か嫌じゃないかの判断をし、それに対するアプローチをしていくしかない。
例えば、怪我をするようなことがあれば、「痛いのは好き?」という話に持っていて、「じゃあこれしたら怪我するから、やめたほうがいいと思うんだけど…」
そういう感じで、その主観がどっちかで声掛けも変わる。
(杉山)今日の子どもに対する声掛けやコミュニケーションの取り方に関するお話の中で、「丁寧に」という言葉がよく出てきたように思います。
杉本さん自身、声掛けをするときに丁寧にということを気を付けている?
(杉本)それが一番大事だと思います。
どうしても大人って、注意するときには切羽詰まっていたり、イライラしたりするので、大人の社会の説明の仕方をしています。
「言わなくてもわかるでしょ」と、短縮して言っちゃう。
でも、それを子どもは理解できない。
子どもは基本的に、「なぜ?」と理由が欲しい。
まず理由がわからないと、納得できない。
だから、最初の方にお伝えした、丁寧な理詰めが必要。
会話をしながら、「○○でしょ、だからダメだよね」っていうふうにやっていくのが大切です。
大人はイラッとしますけど、子どもはそっちの方がイラっとしない。
(杉山)上から目線の理詰めではない。
(杉本)もちろんそうです。
あくまで、ダメな理由をを分からせるために、一つ一つやっていくということです。
(杉山)学年のカラーを感じますか?
(杉本)それは確実にあります。
(杉山)それはなぜでしょう?
(杉本)「この学年はこうです」っていうのはなく、単にいろんな個性の相性がたまたまがうまくいってるかうまくいってないかだけのことだから。
あとは、上の学年や下の学年の影響によったりもするっていうのはあります。
なぜかということの答えは、残念ですが、一概に「これです」というのはないです。
あったらラクなんですけどね。