子どもを伸ばす夫婦のコミュニケーション【Part4 褒めると認めるの違いとは?】

パートナーシップ

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<お話を聞いた人:天野ひかりさん>
フリーアナウンサー。「おやこみゅ」NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事。一般社団法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。
上智大学文学部卒業。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK eテレ『すくすく子育て』でキャスターを務めるなどメディアで活躍する一方、全国で子育てやコミュニケーションなどに関する講演会やセミナーを行う。最新著書『賢い子を育てる夫婦の会話』(あさ出版)※韓国語版も翻訳出版
天野ひかりオフィシャルサイト http://www.amanohikari.com

<聞き手:杉山錠士さん>
兼業主夫放送作家。NPO法人ファザーリング・ジャパン会員。
1976年、千葉県生まれ。高2と小3という年の離れた二人の娘を子育てする兼業主夫放送作家として、FMラジオを中心に情報番組、子育て番組などの構成を担当。「日経DUAL」をはじめWEBメディアでは各種コラムや記事を執筆し、「日大商学部」「筑波大学」や大田区両親学級、品川区男女共同参画課などで講演を実施。地域ではPTA会長やパパ会運営を歴任。子育てアイテム「パパのツナギ」企画制作販売、元パパ向け情報サイト「パパコミ」編集長。

トーク内容テキスト(一部編集しています)

(杉山)どういう相談が多いですか?

(天野)パパからの相談ダントツ1位は、「帰宅すると、ママが子どもにイライラ怒っていて、そういう時自分はどうしたらいいでしょうか」っていう相談。

そのときにどういう行動をとってますかと訊ねると、だいたい優しくママに、「そんなに怒らなくても、もう子どもは分かってると思うよ」って諭すとおっしゃる方が多いですね。
その次に多いのが言うと藪蛇で、もっとママが怒り出すから、とりあえず嵐が通り過ぎるまでゲームしたりスマホを触って、自分は沈黙を保つという方。
その次に多いのは、そういう現場を見ないように帰宅時間を遅らせるという方。

だいたいその3パターンが多いんですが、これ本当にもったいない。
そのままいくと、パパの居場所がなくなってしまう可能性があるので止めましょう。

うまくいかないのは、ママは子どもに怒っているからではないんですね。
ママが本当に怒っているのは、帰ってきても一緒に何もしてくれないパパに対してイライラが募ってたまたま出ている先がお子さん…もう子どもいい迷惑ですよ、可哀想に。

なのでパパがいない間は、意外とママと子どもは楽しく仲良くやってたりするものなんです。
パパが帰ってきた瞬間にママがイライラするので、子どもも敏感に感じ取ってしまいます。

帰って来てパパがすべき正解は、「代わりに家事をやるよ」ですね。
「お皿洗うよ」とか「お米を炊くよ」でもいい。
パパが「代わりにやっとくよ」って言ってくれたら、そのままそれはママのやってることを認めることになるので、スーッとママの怒りがなくなります。

(杉山)怒っているママも認めるってことですよね?

(天野)そうです。怒ってるママを認める。
怒っている原因はきっとパパにあるわけなので。

(杉山)そうとも限らないと思いますけれど…(笑)

(天野)ママが何にイライラしているかと言うと、子どもの宿題やピアノの練習を見なければいけないけれども、この後で私はご飯の支度をしなくちゃいけない。
それが後ろ倒しになっていき、そうすると寝る時間がまた遅れるとか、そういうことをいろいろ考えてママのイライラがヒートアップする。

パパが1個懸念材料を片付けてくれているって思うとすごくありがたくって、ママは子どもの宿題を見るっていうことに集中できる。
ぜひ試しに、黙ってスマホやらないでいただけるといいかなと思います。
効果てきめんだと思います。

(杉山)怒っているのはわかった、いいよって認める。
じゃあご飯作っておくから、(ママには)そっちを任せるわっていう感じにしておいたら、その怒ってることも早々に片付きそうな気もしますね。

(天野)おっしゃる通りです。早々に片付きます。

(杉山)自分の要望を伝えたら喧嘩になることが多い。
喧嘩とコミュニケーションとの境目はどういうふうに捉えますか?

(天野)喧嘩って定義がきちんとあるわけではないので難しいかもしれないんですけれども、一方的に何かを伝えるって言うのは、喧嘩でもコミュニケーションでもないと思っています。

自分の要望を「私はこういう夫婦でありたいと思ってるよ」ときちんと伝えて、相手がそれに対して「僕はこういう夫婦でありたいと思ってるよ」っていうことをちゃんと二人でかみ合って話し合いをしていく。
そういう意味では、喧嘩でもコミュニケーションでも同じです。

コミュニケーションと喧嘩の違いは、喧嘩の方がちょっと感情が高ぶっている状態かなっていうふうに思います。
だから喧嘩の時は、「そうか今すごく感情で爆発してしまったね」と、ちょっと大目に見る。

でも、感情が高ぶって出てしまうっていうことも、家族間・夫婦間ならありかなーと思ってます。
外でやらないために。
ガス抜きじゃないんですけれども、それができればいい。

ただ、暴力と喧嘩は違います。
手が出なくても、性格、才能、体格とかそういうものを攻撃して一方的に相手を傷つけるのは暴力で、喧嘩ではないですね。
「お前なんか」とかそういうことを言ってしまった時点でそれは喧嘩ではなく、暴力になってしまうので、アウトです。

で、最後にきちんと二人で話し合って、喧嘩をし合って「あれは喧嘩して良かったね」「コミュニケーションをとって良かったね」っていうところまで行って初めてそれが成立する。
喧嘩をし終わったいうところになると思うので、そこまできちんと順番を追ってできるといいかなって。

それを子どもに見せてみせるのはどうですかっていうこともよく聞かれるが、喧嘩してるところは子どもに見せない方がいいです。
ただ、見せてしまうような状況だってあると思うんですね。
見せてしまった場合には、ちゃんと仲直りするところまで子どもには見せていただきたい。

よくあるのは、子どもに喧嘩してるところだけ見せて「早く寝なさい」と寝かせ、その後に解決したような場合。
次の日の子どもにとっては、喧嘩してた状態からパパとママが何となく仲直りしてるっていう見え方になり、仲直りの過程が抜けてるわけです。

それではもったいないので、どうやって仲直りしたのかっていうところまで子どもには見せていくことで、子どもが喧嘩上手、討論上手になっていくのかなと思います。

(杉山)ありがとうございます。
天野さん自身が相手の立場に立つために日々している努力・工夫はありますか?

(天野)多分これは職業病だと思うんですけれども、アナウンサーって相手の方にいかに喋ってもらうかっていうことをずっと訓練してるんです。

自分の考えを話すんじゃなくって、相手が話したいことを話してもらうために、私はどういう質問を振るとこの人が話せるかなとか。
言葉ではこう言ってるけれども実は本音は違うなとか考えて、その本音を引き出すためにはこうやって質問してやれとか、ちょっと怒らせてみようかなとか。
そういうことをずっとやってきているので、それが身にしみついていて、子育てでも夫婦間でもそれを実践しているっていうところがあるのかなと思います。

ただ、私は、誰よりも夫と娘に対してのコミュニケーションに気を遣ってます、考えてます。
(仕事上の場面を除いては)他の人と話すときには何も考えていないというぐらい、家族とのコミュニケーションには力を注いでいる。
これが一つ目の気を付けていること。

もう一つはですね、すごくいい質問なのでとっておきをご紹介します。
目的と手段・テーマを間違えずにちゃんと自分の中で持っているということを日々努力しています。

例えば就職時の面接。
「その時のあなたの目的は何ですか?」いうことを間違えずに、きちんとお話ししましょうということを、学生にもお話します。
面接官が「政治について君の考えを教えてください」と言った時に、評論家のように素晴らしい答えを言ってしまったら、落ちます。

なぜか?目的は、自分の人となりを相手にアピールすることですよね。
でも、間違えて政治という手段に乗っかっちゃってその正解を言ってしまうと、これ失敗するわけです。

もっと身近な話にしましょうか。

パパが子どもに今日謝ろうと思った。
この前すごく怒りすぎちゃったから今日は絶対に謝ると思って、子どもに謝った。
そしたら子どもが「別にそんな今更謝られたところで」と更に憎たらしいことを言ってきた。
パパが「なんだせっかくお父さんが謝ってるのに」と、 またさらに喧嘩になってしまう。

目的を、謝ることに設定しているから、失敗したわけです。
目的は、子どもとの関係を修復してより良い親子になることだっていうふうにきちんと持っていれば、謝ることはただの手段です。

だから子どもがそうやって言ってきたら、「そっかお前はその時そんなに嫌だったんだな。だからこんな風に言っちゃって悪かった。お父さんどうすればいいかな」っていうふうに話し合いはできるわけですね。

人と会う時、誰かと何かをする時、仕事をする時、ただのランチに行く時でさえ。
例えば、「今日はお友達の失恋の話を聞いてあげるんだ。私は聞き役に徹するんだ」というように目的をちゃんと持っていくと、間違えず、にブレずに話し合いができるのかなと思います。

たから夫婦の関係性でも、「今日はママをやり込めるんだ」じゃなくて、「謝るんだ」じゃなくて、「ママと良い関係になるために自分はどうすべきか」をちゃんと話し合いたいというふうに目的意識を明確にする方がいいかなと思います。

(杉山)子どもを認める言葉かけの具体例が聞きたいです。

(天野)「いいよ」を認める言葉として使うというところからいければいいかなと思います。
3ステップと私はお話しさせていただいています。

ステップ1
相手を認める。「いいよ」とやっていることを認めます。
ステップ2
ママ・パパの考えを言います。あるいは見本を見せます。
ステップ3
社会のルールを伝えます。

この順番でお話をするというのが基本パターンになります。

例えば、子どもが公園の滑り台で、みんなが列に並んでいるのに割り込んで入ろうとしたとき、これをどうやって認めるのか。たいていの方は「順番守って!ダメ!」と言ってってしまいます。

ステップ1
「いいよ滑りたかったねー」とまずは子どもには伝えてほしい。

ステップ2
ママがお手本を見せます。
並んでいる子どもたちに「ごめんね家の子がが割り込もうとして。今、お話するから」とママがお手本を見せます。

ステップ3
子どもに対してちゃんとルールを伝えます。
「滑り台は、みんな順番守って滑ろうね」と。

この1・2・3の順番をお話することで、子どもはびっくりするぐらいママ・パパの話を聞けるようになります。
そして、自己肯定感が育っていきます。
なぜなら人間は認めてもらって初めて、相手のことを認めることができるようになるからです。

たいてい、1・2を飛ばしてステップ3から行っちゃうんですね。
「ルール守って!順番だよ!」って。

ステップ1・2が抜けるから、認められたっていう気持ちが子どもの中に芽生えないまま、「いつもパパは僕を否定する」「いつもママは僕のことを叱る」という風になってしまう。
「認める」「ママ・パパがお手本を見せる」「ルールを伝える」っていう順番をぜひ守っていただきたい。

【著書の紹介】
『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』

○×式で、こういう言葉だと子どもにはこういう風に受け取めてしまうからもったいない、こうやって言うといいよっていうことを書かせて頂いております。
手にとっていただけると嬉しいです。

(杉山)滑り台の例以外で、見本を見せる具体例を教えてほしいです。

(天野)レストランに行って子どもが走り回って、お母さんが「走り回らないで」と注意する。
よく見る光景だと思うんです。

これ、やっぱりステップ3からいっちゃってるんですね。

でも、ステップ1からいきましょう。
走ってる子どもに「うわぁ楽しくなっちゃったね。こんなレストランきて嬉しいよね走るって素晴らしいことだよ」と、認めてます。

ステップ2
周りに、お母さん・お父さんが謝ります。
「家の子が走り回ってしまい、申し訳ありません。今静かにさせます。」とちゃんと謝ります。

ステップ3
「レストランは食べるとことが目的の場所だから、走り回る場所じゃないよ」と子どもにちゃんとルールをお話します。

認められた後なので、子どもも聞く耳を持ちます。
もちろん、子どもの状態によってその前に何かがあれば聴かないかないかもしれません。
その場合はやっぱり一緒に外に出ます。

「子どもが走っているのに、なんで親が謝るの」という声も聞くんですけれども、走っちゃいけない場所に連れてきたのは親です。
だから、親の責任としてちゃんと謝る。

その姿を見て、子どもは、じゃあここは走っていい場所なのかな、病院はやめとこう、バスの中はダメだな、運動場で思いっきり走っていいんだ、公園は走っていいんだ…と、自分で応用を利かせて考え、行動できるようになっていくので、結果早道です。

いつもやめさせていると、自分で考える力が育まれないまま、理由がわからず、やめさせられたからやめている/やれって言われたからやってるっていう子どもが育ってしまうともったいないかなと思います。

(杉山)ありがとうございます。
子どもを伸ばすコミュニケーションとして、ゲーム感覚でやる気を引き出すようなことをやっています。
気をつけなきゃいけないことみたいなのはありますか?

(天野)良いと思います。
もしやれるなら、子どもにだけやらせるんじゃなくって、大人も一緒にやってみるといいでしょう。
パパやママが真剣にやってる方が、子どもの集中力っていうのが最大限に発揮されるので。

(杉山)今日は、夫婦の会話と親子の部分のコミュニケーションについて、天野ひかりさんに教えていただきました。ありがとうございます。

(天野)ありがとうございます。

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