子どもを伸ばす夫婦のコミュニケーション【Part3 褒めると認めるの違いとは?】

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<お話を聞いた人:天野ひかりさん>
フリーアナウンサー。「おやこみゅ」NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事。一般社団法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。
上智大学文学部卒業。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK eテレ『すくすく子育て』でキャスターを務めるなどメディアで活躍する一方、全国で子育てやコミュニケーションなどに関する講演会やセミナーを行う。最新著書『賢い子を育てる夫婦の会話』(あさ出版)※韓国語版も翻訳出版
天野ひかりオフィシャルサイト http://www.amanohikari.com

<聞き手:杉山錠士さん>
兼業主夫放送作家。NPO法人ファザーリング・ジャパン会員。
1976年、千葉県生まれ。高2と小3という年の離れた二人の娘を子育てする兼業主夫放送作家として、FMラジオを中心に情報番組、子育て番組などの構成を担当。「日経DUAL」をはじめWEBメディアでは各種コラムや記事を執筆し、「日大商学部」「筑波大学」や大田区両親学級、品川区男女共同参画課などで講演を実施。地域ではPTA会長やパパ会運営を歴任。子育てアイテム「パパのツナギ」企画制作販売、元パパ向け情報サイト「パパコミ」編集長。

トーク内容テキスト(一部編集しています)

(杉山)褒めると認めるってちょっと違うと思うんですけど、そこの違いみたいなのっていうのは、天野さんはどう捉えていますか?

(天野)そうなんです。褒めると認めるって、実は全然違うんです。
NHKの番組でこんな実験をしたんです。
「いつも叱ってばっかりで自己嫌悪です」っていうお母さんと、「私は褒める子育て実践してます」というお母さんに取材をしました。

まず、怒ってばっかりのお母さんに、今から1時間一切お子さんを怒らずにに遊んでいただけますかとお願いしました。
最初の30分ぐらいお子さん、ママの顔色を見るんですね。
どうも怒られないってわかったら、子どもはものすごく楽しそうに、創意工夫して遊びました。
途中からお母さんもボロボロ涙流して、
「なんで私叱ってたんでしょうね。叱らなくったって、何も悪いことはしない。
あんなに楽しそうに遊ぶんだったら、これから叱らずに子育てしていきたいと思います」と。

褒める子育てをしているお母さんに、申し訳ないけど、一切お子さんを褒めずに1時間遊んでいただけますかってお願いしました。
最初の30分間ぐらい。どうなったと思いますか?

(杉山)楽しそうに遊んだのでは?

(天野)はい、そうですよね、最初の30分ぐらいやっぱりお子さん、ママの顔色見るんです。
どうもこれ、褒めてくれない。これをやっても褒めてくれないの?
褒めてくれないんだってわかった後、そのお子さん、まあ楽しそうに生き生きとお母さんが今まで見たこともないような身体能力を発揮して遊んだんです。

お母さんは途中から涙をうっすらと浮かべて、「そういうことだったの」と。最後ね。
「私、今までも褒める子育てがこの子を伸ばすんだと思って、一生懸命褒めてきてたんですけど、間違ってたことに気づきました。
私の理想を子供に押し付けただけだったと今日わかりました。
これから褒めずに、子どものやりたいことをそのまま認める子育てをしていきたいと思います。」っておっしゃったんです。

つまり、褒めるのも叱るのも、親がこうあってほしいという望みに対して、叱るか褒めるかという手段が違うだけで、同じ側にあったってことなんですね。

認めるっていうのは、その対極にあります。
子ども自身のやりこと、潜在能力というものを、そのまま邪魔せず発揮させてあげられること。
そんなことができるんだ、そう考えたんだ、それはLGBTにも通じると思うんですけれども、女の子だけど実は男の子のような考え方を持っていたんだねっていうことも含めて、ママやパパにとっては嫌なことかもしれないんですけれども、それを認めていくことで、実は子ども自身もすごい能力も発揮させることができるんじゃないかな。

これが認めるということと、褒めるということの大きな違いです。
褒める子育ても、間違えちゃうと子ども自身の力をもしかしたら邪魔してしまうことに繋がってしまうのかな。

ただ、この話をするとみんな褒められなくなっちゃう。
褒めることがいけないわけじゃないんですよ。
一緒に喜ぶとか、子どもが望んでることを達成したときには「すごいね」って言うのはいいと思うんです。
子ども自身の力を褒めて伸ばしていることに繋がっていくので。
ただ、お母さんやお父さんがあってほしいと思う方向に誘導するために使わないようにしていけるといいのかなあと思います。

(杉山)例えば、家に帰ってきて何もしないで着替えもしないで1時間ゴロゴロしてるなど、それを褒めていいのかなっていう状況。
褒めた方がいいのか?どう認めていくといいのか?

(天野)例えば、「宿題をしない我が子をどうやって認めたらいいんですか」っていうお母さんから声があります。
宿題をしない子どもって、認められないですよね。やっぱり宿題をしなくてはいけない。
でも、見方を変えましょう。

宿題をしないで、お子さんは何してますかって言うと、みんなハッとするんです。
「うちの子、本読んでます」「ゲームやってます」と。
じゃあそれを認める言葉をかけてますかって言うと、「ゲームは苦々しいので認めてません」「本読むのはいいかと思って放っています」っていう方が多いんですが、それを認める言葉をかけましょう。

つまり、ママにとっては苦々しいゲームかもしれないけれど、ゲームをやってる中でも「集中力すごいね」とか、部分的なあると思うんですね
だから「君がそれをそんなに好きでやってることって、すごいことだと思うよ」っていう認め方ができると思うので、ぜひ認める言葉をかけていただきたい。
黙認はダメです。

ママからパパへの、ダメ出しも多いです。
「パパが帰ってきて、すぐゲームをやるのを認められません」っていう方がすごく多い。
それを認める言葉をかけてますかと訊ねると、「腹立たしいので、かけてませんでした」という回答。
1時間ぐらいゲームをやらせといてあげようと黙認していたが、パパは1時間経っても、まだ食事の準備を手伝ってくれない。

ママ突然「いつまでゲームやってるの?」と怒る。
ママからすると、「1時間認めてあげたのに、なんでやってくれないの?」という怒りからそういう言葉になってるんですけど、言われた側からすると、1時間放っておかれて急に怒られてるという意識になってしまうので。

まずは子どもに対しても、夫婦間でも、相手がやっていることを認める言葉をかけましょう。
相手の行動を認める言葉をかけておいた後、「ゲーム終わったら宿題やるの?」「ゲーム終わったら一緒に夕食作る?」と言っておくと、1時間認めてもらった後なので、「今度は君の言ってることを認めよう」っていうふうに人間は動けるようになっていく。

ぜひ、認める言葉をかけて、自分を認めてもらうという順番を守りましょう。
ジョージさん(聞き手の杉山)が言ったような、帰ってきて着替えもせずダラダラしている子どもを認めるのは難しい。

でもね、ちょっと考えてみましょう。
自分だって、今日1日、大変な思いして頑張って過ごし、座る間もなく立ちっぱなしの仕事だった。
家に帰ってやっとソファに座った瞬間に、「何でゴロゴロしてんの」って言われたら…?
大変だったんだよ!って思うじゃないですか。

(ゴロゴロしている子どもも同様なので)「今日1日大変だったよね。学校で頑張ってたよね。ママ(パパ)も大変だったから、2人でちょっとゴロゴロ休憩しようか。その後、ママ(パパ)は夕食作るよ」と言ったら、子どもも僕の気持ちわかってくれたんだって思って、そのあと宿題にリフレッシュして取り組めるかなと思う。

ぜひ相手の立場に立って、物事を見て、一緒に考えるっていうことができると、リフレッシュできるのかなと思います。
「今」の子どもの状態しか見ていないから、1日中ゴロゴロしてたんじゃないかっていうふうに思ってしまうんですけれど。
子どもも、今日1日すごく頑張ったと思うんです。それを想像すればいいのかなと思うんです。

例えば学校で、「3人ずつのグループになりましょう」って先生が言ったが、自分だけ余っちゃった。
「なんで?」と悲しい思いに陥る。

それでも、お昼、「今日は給食当番立候補してくれる人?」と先生。いつもは恥ずかしくて立候補しないけど、今日は頑張って手を挙げた。でも、選ばれない。
「僕ってダメな子なの?」

それでも、図工の時間、自分は絵がすごく上手だから誰かが褒めてくれると思い、頑張って描いた。
そしたら別の子がみんなから褒められて絶賛されてた。
「僕、クラスで一番絵が上手かったんじゃなかったんだ」ってまた落ち込む。

それでも、学校の帰り道、みんなとケラケラ笑いながら帰っていたら、後ろから来た自転車のおじさんに「道幅いっぱいに広がって歩くのは邪魔だ、どけ」って言われた。
「僕、邪魔な子なの?」

ひとつひとつ、落ち込みながら、それでも元気に、「ただいま」って帰ってきた。
そしたら出迎えたママに、「なんで服汚れてるの?」と言われる。

…もう、泣けそうですよね。
それでダラダラしてたらまた怒られる。
お子さんのそのままを認めてあげられるのは、ママやパパだけなんじゃないかなというふうに思っています。

もちろん叱られること大事です。
ちっちゃな挫折、悲しい思いをすること、悔しい思いをすること、そういうのもすごく大事だと思うんですけれども。
やっぱり認められる、有頂天になる瞬間がある、幸せを感じる、自分ってすごいんじゃないかって思える、そういう瞬間もあって、バランスよく子どもって育っていくんだと思うんですね。

でも、叱ってもらったりっていうことは他の方にお願いできても、褒めて認めてもらうことは、「先生、うちの子だけ特別褒めてください」ってお願いできない。
それだけはパパ・ママの役割として、100%の力で認めてあげても、子どもからすると、何割かぐらいにしかならないので、ぜひ全力で認めるという役割を、負っていけるといいのかなというふうに思います。

(杉山)なるほど。(ママは)パパを褒めなさい、認めさせないみたいな話を聞くと、まるで子どもを諭すようなわざとらしい感じになるじゃないですか。
言われてる方も「馬鹿にしてるのかな」と腹立たしい感じになってしまうは何でなのかなって思います。
あと、パパもママも、(褒める・認めることを)やった方がいいとわかっていても、うまくできないのは、どういうふうにしたら解消できるのかなっていうところが知りたいです。

(天野)そうですよね。会話がぎこちなくなってしまうともったいない。
パパ・ママからのご相談で、お互いにいろんな不満が噴出しているときに、それ全部出していただいた後にやっぱり感じることがある。

ママには、パパにもっと構ってほしい、全力で愛してほしい、子どもが生まれる前ぐらいに大切にしてほしい 私を女として見てほしいという思いがやっぱり根底にあるんです。
出さないし、本人も気づいていないけど。

パパはパパで、子どもができてママは変わってしまった、子どもばっかりで僕に構ってくれなくて寂しい。
だから、もっとちゃんと僕を見てほしいという、切なる願いというのが根底にあるのかなっていうのはすごく感じるんです。

どっちも同じことを考えているのに、プライド、そのときの忙しさ、恥ずかしさ、「今更」という気持ちなどから、うまく言えないっていう状況があると思うんですね。
それを解消するために何か言葉でっていうと、その一歩が踏み出せない。

ひとつは、家事を一緒にやることです。
もう、それしかないかなと思ってます。

ママがお皿を洗ってればパパお掃除機をかけるとか、そういう違うことでもいいんですけれども、一緒に家族・家庭を作っていくという作業をすることで、やっと相手の立場が見えてくる。

「こんなに掃除して大変だったんだね」とか、そういうことに気づいて初めて出る言葉が本当の言葉で、わざとらしくなくなっていくと思うんですね。
やっぱりその体験をしない限り、なかなか第一歩を踏み出すのは難しいかなと思うので、パパたちには特に、家事頑張っていただきたい。

もうひとつは、テクニックの問題なんですけれども、あなたに何して欲しいっていう「You(あなたは)」で始めずに、「I(私は)」こういう家族でありたい、こういう夫婦でありたいっていう望みの方を言うことで、相手が考え始めるんですね。
ママの望みを叶えてあげるためには、自分はどうしたらいいんだろうか。
パパの望みを叶えるために自分は何をすればいいのかっていうことを、本人が考えない限り、変わらない。

「あなたはこれして」って言われたら反発しかないのと、言われたからやる、けれど言われなくなったらやらなくなってしまうっていうことの悪循環に陥ってしまうので、「You」ではなく「I」で話すっていうテクニックをちょっとずつ練習されるといいのかなというふうに思います。

(杉山)「I」で話すのは、1人になっちゃう。
ずっとママが「私はこうしたい」って言い続けて、みんながそれに付き合うような感じになっちゃうと、またひずんでいきますよね。
全員が自分で「私はこうしたい」を出し合ったうえで、じゃあどうしようかって考えなきゃいけないっていうのは結構ポイントですよね?

(天野)そうですね。
ママだけじゃなくて、パパも「自分は今週は仕事が山なんだ。どうしてもこの企画を通したいから、ちょっと帰り遅くなる。協力してくれたら嬉しい」っていうことをちゃんと伝えればママだってパパそんなに頑張ってるときに「オムツ換えて」なんて言わないですよ。そりゃ応援したくなる。
でもそれ、パパだいたい言わないでしょう?
仕事が大変でも、帰ってきて「俺だって疲れてるんだ」しか言わないから、ママもわからないで、イライラしてしまう。
だから自分が今こういう状態なんだっていうことをやっぱり伝え合えるようなことを少しずつしていいのかなと思います。

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