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【Part1 わたしの経歴】
【Part2 世界の多様性の捉え方】
【Part3 多様性は一丸となれない】
【Part4 子どもへの多様性の伝え方】
【Part5 多様性を大事にする意味】
【Part6 親としてできること】
<お話を聞いた人:羽生祥子さん>
京都大学農学部入学、総合人間学部卒業(文芸論主専攻、認知科学論副専攻)。
2000年に卒業するも就職氷河期の波を受け渡仏。帰国後に無職、フリーランス、ベンチャー、契約社員、業務委託など多様な働き方を経験しながらサバイバル。2002年編集工学研究所に入社し松岡正剛に師事。「千夜千冊」「情報の歴史」に関わる。
05年日経ホーム出版社(当時)入社。12年「日経マネー」副編集長。13年「日経DUAL(当時)」を創刊し編集長。18年「日経xwoman」を創刊し総編集長。20年「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」始動。
内閣府少子化対策大綱検討会、厚生労働省イクメンプロジェクト、東京都子ども子育て会議等委員を歴任し、働く女性や共働き家族の声を発信している。大学講師、企業セミナー、TV等出演多数。
プライベートでは2児の母。趣味はピアノ、料理、水泳、金融の勉強。
目下、グローバルの中で薄れつつある「日本の個性」に着目。
<聞き手:杉山錠士さん>
兼業主夫放送作家。NPO法人ファザーリング・ジャパン会員。
1976年、千葉県生まれ。18歳と10歳という年の離れた二人の娘を子育てする兼業主夫放送作家として、FMラジオを中心に情報番組、子育て番組などの構成を担当。「日経DUAL」をはじめWEBメディアでは各種コラムや記事を執筆し、「日大商学部」「筑波大学」や大田区両親学級、品川区男女共同参画課などで講演を実施。地域ではPTA会長やパパ会運営を歴任。子育てアイテム「パパのツナギ」企画制作販売、パパ向け情報サイト「パパしるべ( https://papashirube.com/ )」編集長。
◎協力:Read it LOUD阿佐ヶ谷校(アルーク阿佐ヶ谷内)
トーク内容テキスト(一部編集しています)
(杉山)羽生さんの一つのトピックとして、海外での生活をされた経験がありますよね?
(羽生)海外で生活してた、と言うと、すごいよく聞こえますが。笑。
実際は屋根裏部屋でしのいだり、リュックひとつで公園のベンチで景色と同化させたりと過ごしていました。
アメリカのカリフォルニアの語学学校、ヨーロッパではフランス、ベルギーとかに留学というか放浪に行きました。
(杉山)海外で見てきた多様性は、日本とまたちょっと違うと思うんですが、今の羽生さんの多様性に関する興味や知識に、どうつながっていますか?
(羽生)そうですね。
男性対女性というのは通り越して、例えばエスニックとホワイトみたいな構図。
特にフランスがきつかったですね。
貴族階級の人と、中東やアフリカやアジア出身の人が混在して暮らしていて。
私多国籍色が強いマレ地区で生活していたのですが、民族の権利をかなり声高に主張する一方で、絶対的に入れない貴族階級との差が当たり前にありました。
(杉山)アメリカとヨーロッパってまた違いますか?
(羽生)違いますね!
ヨーロッパは法制度をすごいカッチリ作りますね。
環境問題の時も、炭素税のように、有無を言わさず法律にします。
先日もEUが法律で企業内の女性取締役比率を決めました。
よく日本だと、「欧米」と言って一緒にしますけど、アメリカは法律よりも、経済市場の淘汰とか理論で、投資家が離れていき結果的に選ばれないよ、という金融市場のルールが先にきますね。
今のアメリカだと、投資対象にしてもらって投資資金を入れてもらうには、例えばハワイ系先住民、アフリカ系先住民、アジア系など、少数派の人種が取締役のうち何割に入ってないといけませんっていうルールがあります。
そこまで細かく決まっていて、すごくないですか。
ハワイ系先住民とかアフリカンとか。
それに比べて、日本は男性・女性のところで話がとまっている。
解像度がすごい荒いのに、そんなところで、あーだこーだ言っているって、随分レベルが離れてますよね。
(杉山)いろんな人種があって、それを全部網羅できるわけじゃないですよね。
それはそれで、差別感がある気もするんですけど、そうでもないですか?
(羽生)「みんな正確に平等でなければ」というのが日本人特有の発想だと思うんですよ。
この発想でいくと、すべての民族をまず洗い出して、それを基本的に全部同じ扱いにできるまではスタートできません、と。ですがアメリカではそういうのは目指していない。
手を挙げた人たちがメインになる。
声を上げるのが第一歩ですよね。
そこが結果平等と機会平等の違いかな。
(杉山)やっぱり日本は結果平等?
(羽生)ひどく正確な結果平等を目指しすぎていると思います。目的を見失いがち。
誰も心配してないようなすごい小さなところまで「こういう場合はどうなるの」みたいに、あらかじめリスクヘッジを取りすぎて、がんじがらめになり、それは実現できませんって言って10年間ぐらい進まない。
イメージですけど、アメリカだと「これに乗っかりたい人?」て聞くと、次々手があがり、10人ぐらい集まれば、「じゃあやろう」となる。
能動的な人にチャンスを平等に与える。
(杉山)例えばそれを一つの民族でやるんじゃなくて、色々な人を入れようと。
色々な人を入れているところじゃないと、お金を出さないよっていうようなルールになってるということですね。
(羽生)そうですね。
(杉山)日本ってここ数年とかで、多様性みたいなものをどんどんやっていこうっていう感じが出ている気がするんですけど、世界的に見ると多様性の動きはどのぐらいから始まってるんですか?
(羽生)多様性の動きは、ルールになって目立ってきたのは2018年ぐらい。
(杉山)そんなに変わんないんですね!
(羽生)コーポレートガバナンスコードに反映され始めたのが、そのぐらいですね。
ルールづくりとして早かったのは教育分野。
特に北欧は「長靴下のピッピ」の物語もあり、すごく進んでましたね。
(杉山)そういう進んでるところが、多様性が重要と気づき早めに着手したのはなぜでしょうか?
(羽生)日本学術会議というのがあり、私もそこで初めて聞いたのが
ヨーロッパに、経済や政治だけでなく、研究分野でもルールを作り始めて、
そこからだんだん動きがあり、ようやく大きいルールができたのは、2020年の「ホライゾンユーロ」。
それは何かというと、研究にジェンダーバランス考慮とジェンダー分析組込みを推奨するということです。
国家機関が、ジェンダーダイバーシティがない研究チームには、論文の査読すらしてもらえないし、結果、研究費は1ユーロも出しませんというルール。
なんでというと、女性の権利や女性研究者を増やすという目的ではなく、もうこれ以上研究に投じる国家の予算が増やせませんと。
今まではどんどん研究費を増やしていくことによって、研究結果とそれにおける国の利益がちゃんと相関していたたんです。
それでも予算が足りず、これからは予算を増やせませんとなった時に、同じようなペースで研究結果を出し、しかもその国の利益にするには、どうしたらいいんだって研究者たちが考えた。
コストを下げるとか。
その中で明らかだったのが、チームに女性を入れるってこと。
男性だけの研究チームより、研究結果が上がることがわかったそうです。
すごい合理的だなと。
(杉山)そのもっと前に北欧が動き出したっていうのは、どういう背景なんですか?
(羽生)それは子どもの権利を守るためですね。
虐待とか防止の法制度は、北欧はすごい厳しいじゃないですか。
子どもの権利を守ることから発生して、暴力っていうところがまずターゲットになり、その後は女児男児、ジェンダー平等に教育を受けさせようという動きになっていますね。